RACERSVol.31では、北アフリカの砂漠を席巻したロスマンズブルー、HONDANXRを特集します。パリ・ダカ黎明期、砂漠に挑戦するバイクは単気筒エンジンに大きなヤカンの様な燃料タンクを積んだモトクロッサーでした。シンプルで信頼性の高い単気筒エンジンこそがアドベンチャーラリーにふさわしいと思われていました。そこにBMWが水平対抗2気筒800ccエンジンのスペシャルマシンを投入します。街中や林道ではネガティブ要因にしかならない幅の広いエンジンは砂漠では問題にならず、低重心とも相まって瞬く間にパリ・ダカをアドベンチャーから高速ラリーへと塗り替えてしまいます。単気筒のXL500Rでは勝てない―HONDAも遂に多気筒化に着手します。そんな中、やみくもにパワーアップや高回転化を図らず、耕運機の様に低回転からパワーが出て150km/hの高速巡航を可能とした45度V2・780ccのエンジンが生まれます。それがNXR(ヌクサール)の新しい車体に搭載されました。左右に分けられた燃料タンク、整備性の良い正立フロントフォーク+リアのPRO-LINK、セルスターターの搭載、大ジャンプでも壊れないチェーン駆動を採用…と、ネガティブ要素を徹底的に潰したこのマシンは初年度からシリル・ヌヴーと共に快進撃を始めます。
